Sampha / Process

DrakeやKanye WestSolangeといったメジャーのUSヒップホップ/R&Bからのフックアップに、ダブステップ以降の歌うプロデューサー、またはシンガー&トラックメイカーというスタイル(ここに最近ではArcaが加わった訳だ)、コンポジションの核にピアノ(歌詞にも頻発するその楽器とアーティストとしてのアイデンティティの結び付きは相当のものだと思われる)を据えている点や、低くくぐもった声質にファルセットを多用した歌唱等、James Blakeとの共通点は多い。

しかしトラックに於けるエレクトロニクスへの依存度は然程高くないし、過剰な音響もまるで無く、サウンド・エンジニアとしての印象は余り強くない。
生っぽいドラム・サウンドを始め、多様な生音を巧みに織り交ぜたプロダクションの耳障りはスムースだが、かと言ってアメリカに於けるネオ・ソウル復興との共振をそれほど感じさせる訳でもなく、やはり先ず想起されるのはSbtrkt、延いてはウェスト・ロンドン/ブロークン・ビーツ、4hero周辺だったりもする。
歌だけではなくその音色でも共通した感覚があり、「Sbtrkt」に於けるSamphaの貢献の大きさが窺える。

サウンド自体は例えばSolange「A Seat At The Table」と然程懸け離れているとは思えないにも関わらず、この音楽をソウルだとかR&Bと呼ぶ気になれないのは、隙間の少なさに起因するファンクネスの欠如や英国産らしい(レーベル・メイトでありオープニング・アクトも務めるThe XXにも通じる)メランコリーのせいだろうか。

生音とエレクトロニクスの高度な融合からは確かな技術を窺わせるが、その破綻の無さと引っ掛かりの無さは表裏一体で、貶すところも無ければこれと言って賞賛すべきところも無いという中庸さに於いて、やはりSbtrktと通じるものがあり、ダンス・ミュージックとしての機能性や享楽性に欠ける分、決して嫌いな作品ではないにも関わらず、より一層語るべき言葉が見付からないというのが些か口惜しい。