Miguel / War & Leisure

David SitekやRaphael Saadiqの参加はSolange「A Seat At The Table」との共通点だが、確かにリヴァービーでややサイケデリックな音像は如何にも当世風のオルタナティヴR&Bといった趣きで、トラップの影響著しいM3やM11の唸るサブベースに、耳を劈く鋭利なスネア/クラップや、M6の畝るベース等のモダンな音色からは、ソウル・ミュージックをアップデートせんとする意気込みが明確に伝わってくる。

ギタリストでもあるMiguel自身が弾くD'Angeloにも通じる感覚のコーラスを多用したロウなギターの音色と言い、トラック毎に様々に趣向を凝らしたドラムのミキシングや残響処理と言い、音響面のギミックは過剰で、少し痛々しいくらいにオルタナティヴであろうという意思が横溢している。

一方でM2の躁的なヴォーカルはMicheal Jacksonを思わせたりもするし、80’sマナーのM7やM9からPrinceを想起するなと言う方が難しく、更にはM4のオールドスクールなソウル嗜好にはAnderson .Paakに通じる部分も感じられる。
その他にもブルージーなM5や、M9のラテン調にスパニッシュなM10等、スタイルにはそれなりの幅があるが、それ故にやや散漫な印象があるのも確かで、Solangeのようなトータリティを獲得するには至っていない。

プロダクションに反してソングライティング自体は極めてオーセンティックで、例えばMoses SumneyのようにコンテンポラリーR&Bの枠を大きく逸脱するようなものではない。
ソングライターとしての資質や性向は至ってノーマルだが、オルタナティヴであろうとする強烈な意思を感じさせるところは何処か90’sオルタナティヴ・ロックに於けるBelly Corganを彷彿とさせる。