Queens Of The Stone Age / Villains

マシニックなギター・リフは相変わらずだが、その耳触りの良いクリアなディストーションサウンド(変な表現だが)や、シンセを始め、コーラスにオルガンやストリングス、チェロにサックス等の多様な音色による装飾といった豪奢でメジャーなプロダクションには、確かにMark Ronsonの存在感が張り付いている。

とは言え元よりThe Kinksをカバーするようなポップ志向が特徴の一つであったバンドだけに、然したる驚きは無い。
この15年間にどのような音楽的変遷があったか知らないが、「Song For The Deaf」と大した違いがあるとも思えず、海外メディアの反応が概ね好意的なところを見ると、もしかすると久方振りの原点回帰的な作品なのかも知れない。

しかしそれにしてもアメリカでの根強い人気の高さや、ミュージシャンズ・ミュージシャンとして指示される理由がさっぱり理解出来ないのは、背景にストーナー文化があるからなのだろうか。
個人的にJosh Hommeのヴィブラートを効かせた無駄に男前な歌声はやっぱり苦手だし、冗長なサイケデリック・ロック路線やM7のような最早AORみたいな曲は退屈極まりない。

それでも21世紀のポップ・ミュージックに於いて、この絶滅寸前の旧態依然としたハード・ロックのギター・リフのシンプリシティに、心の底からは否定し難い快楽があるのも確かで、M5のような衒いの無いオールドスクール・ロックンロールにはどうしても身体が反応してしまう。
音楽性は違えどAt The Drive-Inと言いMogwaiと言い、90年代から活動するロック・バンドの近作に、最早時代性との間で試行錯誤した痕跡が全く見当たらないのは、最早ロック・ミュージックが自分のような特定の好事家だけに向けて作られる音楽になったという事の証左のように思えてならない。