Liars / TFCF

一人になってしまった感傷に身を任せて弾き語りをやってみるも今一つ面白くないのでループを重ねてドラムマシンでビートを乗せたらClouddeadみたいになった(そう言えばAngus Andrewの歌声は何処となくDose Oneに似て…ないか)、といった趣きのM1は、安易とも思えるアイデアを即実行に移せるフットワークの軽さこそがLiarsの強みだと改めて実感させる。

アコースティック・ギターとサンプリング・ループにブレイクビーツがアルバムの基調を担っており、フォーキーなギターにシンセベースが効果的に絡むローファイ風のM4や、チェロを加工したようなドローンがメランコリアを醸出するM6やM10、物憂げなアンビエントのM11等には、確かにリリカルな歌心も感じられ、孤独がテーマというのも全く解らないではない。

とは言えジプシー・ミュージックとインダストリアルを混ぜ合わせたようなM2や弛緩したNine Inch NailsのようなM3等のせいで、全体的には相変わらず冗談だか本気だか良く解らない。
アップリフティングに振り切れた前作に些か居心地の悪さを感じていただけに、それらの如何にもLiarsらしいデカダンスに安心感を覚えたりもする。

一方でダンス・オリエンテッドでこそないがエレクトロニック志向のM5、M8、M9では、ここ数作で習得したビート・メイキングがしっかり踏襲されているし、ピアノのループが印象的なM7ではポストパンク路線も継承されている。
思えばどのアルバムも変化を強調しながらも、従来のファンを安心させるようなフックとなる曲を配置する事を欠かさず、必ずエクスペリメンタルとポップのバランスを取ってくるところは、Liarsが決して平均点以上を外さない理由であるし、逆にエポックを作れない理由でもあるような気がしてならない。