The Breeders / All Nerve

Steve Albiniの録音特有の飾り気の一切無いロウなサウンド、直線的で単調なベースとローファイなギターの隙間だらけの構造、メジャーともマイナーとも言い難いメロディとKim Dealのニュートラルな歌声、それらは紛れも無くThe Breeders以外の何者でもなく、正直それ以上の感想は出てこない。
開き直ったようなロックンロール回帰は昨今の一傾向だが、At The Drive-InQueen Of The Stone Ageの近作が足元にも及ばない程の圧倒的な一貫性に時間の概念は吹き飛ばされる。

M8はまるで「Cannonball」ようで、10年前の「Mountain Battles」に較べるとよりストレートにロックしており、「Last Splash」に近い感覚がある。
とは言え10年振り故の気負いをまるで感じさせないどころか、スタジオでのセッションをベースに作られたようなラフさが充満しており、ほぼ 1ヴァース+コーラスのみのアンチ・クライマックスなソングライティングに練り込まれた様子は一切無く、ここまでで行くと清々しくもある。

お世辞にもフックに富んでいるとは言い難く、正直似たり寄ったりの曲が多く、聴いている内にだれてくるが、そのミニマムな構成が装飾過剰のインディ・ロックに飽きた現在だからこそ新鮮に響くのも確かで、本作にも参加しているCourtney Barnettが熱烈に評価される背景にもそのような時代の無意識の存在があるのではなかろうか。

ただ数多くの参照点を見出せるCourtney Barnettとは違いThe Breedersのサウンドは(Pixiesを除いては)如何なるバンドも連想させる事は無いし、況してノーマルなロックンロールとは到底表現し難い。
こんなにもシンプルであるにも関わらず(寧ろそれ故に?)比類すべき音楽がまるで思い当たらないというのは、それだけで偉大な事だ。