Spiritualized / And Nothing Hurt

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ウクレレにスライドギター、ピアノにブラスにストリングス等の多種多様な楽器を使った豪奢なアレンジメントには、確かに殆ど1人で創ったとは思えない程の壮大さがある一方で何処か孤独を感じさせる音楽でもある。
M3のイントロで高らかに鳴るオルガンは特に「Automatic For The People」の頃のR.E.M.を彷彿とさせ、まさかタイトルは「Everybody Hurts」へのアンサーだろうか。

ユーフォリックなメロディとトラディショナルなフォーク・ロック調が、徐々に様々な楽器音やスペイシーな装飾音を引き連れながら醸出するカオティックなサイケデリアはThe Flaming Lipsを想起させ、Jason Pierceのよれよれでお世辞にも巧いとは言い難い歌はMichael Stipeよりも確実にWayne Coyneに近い。

ミキシングも混沌としているが、Dave Fridmannの仕事のように覚醒を促す異常な音響が出現する事はなく、穏やかなアルバム全体に於いては確かにギター・ドリヴンでアップリフティングなM5、M7がフックを形成してはいるものの、他はどれも同じに聴こえるし展開にも乏しく、一方的な音の足し算ばかりで効果的なブレイクも少ない。
勿論それがある種の狙いである事は解るが、それを差し引いてもやや退屈さは否めない。

とか言いながらも繰り返し聴く内に癖になるような中毒性も確かに無くはなく、それはやはりまるで90’sのR.E.M.の良さに気付いた時のような感覚を惹起するが、そうすると寧ろMichael Stipeの歌声が猛烈に恋しくなり些か困る。
解散からもう8年そろそろせめてソロ・アルバムくらい出してはくれないものだろうか。