Freddie Gibbs & Madlib / Bandana

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何を置いても先ずオープニングのジャパニーズ・イングリッシュの笑撃は捨て置けない。
日本人には「モヤモヤさまぁ~ず」のナレーションでお馴染みのその音声は(つぶやきシローだとばかり思っていたが)、Hoyaが商業用に開発したVoiceTextという音声合成ソフトによるもので勿論音楽用ではない。
そんな代物に目ならぬ耳を付けるアンテナとユーモア・センスは流石Madlibで、これ契機にオートチューンの次はこれなんていう風に、USヒップホップでVoiceTextが流行したりなんかしたら面白い。

そのような妄想が強ち有り得ない話でもないような気させるのは、Pusha-TからKiller Mike、Anderson .PaakにMos DefにBlack Thoughtまでという、間違いなくMadlib関連作史上最も豪華ゲストの顔触れで、Madlibのこのプロジェクトへの力の入れようが伝わってくる。
それだけMadlib自身がこのギャングスタ・ラッパーとの相性に手応えを感じているという事なのだろう。

そのFreddie Gibbsのラップは相変わらずナスティでストレートだが、若干オールドスクールな感じの前作と較べて、メロウに歌うM13のようなモダンで複雑なフロウを聴かせる瞬間が増えた印象も受ける。
一方のMadlibは前作に引き続き比較的ギミック控え目でストレートなトラックが多いが、あろう事かこれらは全てiPadで制作されたものだという。
それでもチリノイズ塗れのサンプル・ベースのトラックが大半で、Madlibらしく煙たくフリーキーな質感を損なっていないのは流石。

しかし何と言っても特筆すべきはM2のまさかのトラップで、専用のライブラリなんかもあるのだろうとは思うものの、そこら辺の若手プロデューサーと較べても全く遜色無く、寧ろMadlibならではセンスの良さが光る。
M9の浮遊感のあるアンビエント風のシンセ・シーケンスも極めて新鮮で、これまでのMadlibからは想像し辛いセンチメントで溢れている。