Freddie Gibbs & The Alchemist / Alfredo

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M7のフロウはMadlibとの「Situations」そっくりで、流石にこれだけリリースが旺盛だとフロウのヴァリエーションが尽きた感が無くもないが、それでもやはりDrake以降、歌うようなメロディックなフロウが主流となった中にあって、Freddie Gibbsのリズムで聴かせるフロウには確かな中毒性がある。
名だたるトラックメイカーから愛されるラッパーだというのも良く解る話ではある。

まさかのトラップもあった「Bandana」に較べて、The Alchemist作のトラックは徹底してサンプリング・ベースでビートも控え目のものが多く、リズムよりもアトモスフィアで聴かせるといった印象。
総じて地味ではあるが心地良くレイドバックしており、特にTyler, The Creatorを迎えたM6のジャジー/フィリーソウル的な感覚は「Scum Fuck Flower Boy」「Igor」に通じるし、M8は「To Pimp A Butterfly」を連想させたりもする。

とは言え決してメロウ一辺倒ではなく、ほんのり不穏でドープなムードが漂うM2やM5は、アブストラクト・ヒップホップ的と言うか少しCompany Flowを思わせたりするし、トラップでこそないもののスクリュードされたホーンのループがアンビエンスを醸出するM7は少し異質な存在感を放っている。

個人的にはDilated Peoplesとの仕事のイメージが強いThe Alchemistだが、近年はKendrick Lamarを始めSchoolboy QやDanny Brown、Anderson .Paak等の作品に於いて、数は少ないながらもアルバムの流れやストーリーテリングのコントロール上重要なトラックを提供している。
サンプリングに拘りながらもMadlib程フリーキーではなく、9th Wonderのようにサンプリングを強調するでもなく、大ネタ使いを避けキャッチーなメロディにも頼らない、派手さは無いが燻銀的なその存在感は、ビートの強度こそ違えどDJ Premireを彷彿させる。