Kim Gordon / No Home Record

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M1のインダストリアルなビートは宛らAlec Empireのようだが、意外にも全く違和感は無く、寧ろKim Gordonの無調のヴォーカルに自然とフィットしている。
M5の4/4のビートとエコーの掛かったヴォーカルや、重たいサブベースのリフの上で、只管スポークンワード未満の発声をリピートするM6の冗長性はFactory Floorにも通じ、根拠はまるで無いけれど、ポスト・パンクに於けるインダストリアル、と言うかThrobbing Gristle愛を感じさせる。

とは言えエレクトロニック一辺倒という訳でもなく、M2はFree Kittenを想起させるノイズ・ロックだが、ノーウェイヴ的なある種の退屈さは無く、アグレッシヴでダイナミックでストレートなロックンロールが披露されている。 
M4のベースリフは恰もRage Against The Machineかというくらいのハードロックで些か意外だが、Kim Gordonのヴォーカルの強度に飲み込まれた結果、違和感はまるで無く、正直ヴォーカリストとしてこれ程唯一無二であったかと思い知らされる感がある。

単調なプロトパンクのようなM7は、TelevisionよりもThe Stoogiesを想起させ、(バンド名こそMC5のFred "Sonic" Smithからの引用であるが)唯一「Washing Machine」や「A Thousand Leaves」の頃を思い起こさせるM8を除いては、直接的にSonic Youthを連想させる楽曲は存在しない。
(余談だが、Kim Gordonが「Goo」と「Dirty」を嫌っているというのは有名な話で、そういう意味では寧ろその反動が出た「Washing Machine」と「A Thousand Leaves」が、元よりKim Gordonの趣味を強く反映していると言った方がより正確なのかも知れない。)

Thurston Mooreとの一件があっただけに、失意のフォーク・アルバムでも作られた日にはげんなりだ等と思っていたが、(「Get Yr Life Back」なんてタイトルは意味深ではあるものの) 感傷は一切無く、カラカラに乾き切っていて、充分に耳障りで、Sonic Youthとは明確に違う事をやろうとしていながらも、紛れも無いKim Gordon振りに安心感を覚える。