Perfume Genius / No Shape

エレポップとグラム・ロックとチェンバー・ポップが入り混じったようなサウンドは、強いて2017年のリリースで言うならSt. Vincentに近いだろうか。
ただアッパーだった「Masseduction」に較べると、ビートは抑制されていてやや内省的でもあり、エレクトロニクスと生楽器のバランスで言えば、M10等はBill Berry脱退後の時期のR.E.M.の諸作を思い起こさせなくもない。

シンセが煌めくM1やM2のユーフォリア/サイケデリアはAnimal Collectiveからそう遠くはないし、その声質や歌唱法は猛烈にVampire Weekendを彷彿とさせる(特にM6)。
一方でM7のフィードバック・ギターからはシューゲイズの匂いが漂ってきたかと思えば、M9やM12のラウンジ感はよりによってAirを思い起こさせたりもするが、やはりと言うべきか荘厳で穏やかなラスト・ナンバーのM13はRadiohead「Motion Picture Soundtrack」のよう。

アルバム冒頭の背後で鳴るようなピアノの響きには思わず振り向いてしまいそうな程の臨場感があり、その他にも随所で聴こえる弦楽器の音からはまるで弦の振動が伝わってくるようだ。
一音一音の輪郭がクリアで、立体感のあるミキシングや生楽器と電子音の区別無く多様な音色が絡まり合う音響は、スタティックなんだかカオティックなんだか一概には判別出来ない複雑性を有しているが、過剰な音量の大仰なシンセとヴォーカルやキャッチーなメロディに隠れて目立たないのが何とも勿体無いという意味ではGrizzly Bearの近作に通じるものがある。

関心する部分が無い訳ではないしこれと言って貶すべきところも無いにも関わらず、全く以って一切の興奮を覚えないどころか若干聴くのが億劫でさえあるのは、本作にと言うよりもここ10年進歩も突然変異も無いアメリカン・インディに心底飽き飽きしている証拠なのだろう。
The NationalにもGrizzly BearにもPerfume Geniusにも大差は無く、このマンネリズム較べればセルアウトとも取れるSt. Vincentの方が未だ幾ら増しで、2017年の作品ではDirty Projectorsだけが唯一の救いだったと言って良い。