Haim / Women In Music Pt. III

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姉妹バンドによるポップ・ロックにそのバンド名、更には言っちゃ悪いが田舎臭いルックスから、思わずHansonなんかを連想してしまう。
確かに毒気は一切無いし、M2等の何の変哲も無いパワー・ポップは蛇足だとしか思えないものの、シンバルを殆ど用いないドラムによるビートはモダンだし、ベース・ミュージックを援用したかのような洒脱なM3には単なるアメリカの田舎者ではないセンスを感じる
(事実M1で歌われているように出身はLAだし)。

ビート・プロダクションにはGarageBandを使っているらしく、R&BAOR的なM6はThe InternetやSteve Lacyと並べて聴いても遜色無い気がするし、Dev Hynesとの関わりも然程不自然ではない。 
プロデュースにはRostam Batmanglijが関わっているが、ポップネスとモダニズムのバランス感覚や、これ見よがしになる事なく洗練されたその発露に於いてVampire Weekendと共通するものがある。

見た目やバンド名で相当損している気もするが、最初は疑心暗鬼だったのが気が付くとその落差にまんまと魅了されてしまっている自分もいて、如何にもアメリカ(のしつこいようだが田舎)の姉妹バンドといったジャケットは、寧ろ確信犯的なイメージ戦略なのだろうかと訝ってもしまう
(この点でもVampire Weekendの初期のブレッピーなイメージと重なるところもある)。

M1の心躍るハーモニーは何処となくBrian Willson/The Beach Boysを連想させる(やはり血の濃さとハーモニーの強度には関係があるのだろうか)し、ラヴァーズ・ロック風のM8やフォーキーでThe Carpentersアメリカーナを足したようなM9、ハウス/ディスコティックなM14、アップライト・ベースやサックスがジャジーなM16と、とにかくヴァラエティに富んでいて頭から最後まで楽しめるが、かと言って散らかった印象は無く、ポップ・アルバムして理想的と言っても過言ではない。