The Strokes / The New Abnormal

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The Strokesのファンだった事は一度もないし、寧ろ随分長い間疎ましいとさえ思っていたが、漸くここ数年できちんと「Is This It」を評価出来るようになった。
「Is This It」以降の作品は未聴だが、The Strokesのファンが長年に渡って失望を繰り返してきたというのは何となく知っていて、第三者の目には7年振りという本作は2010年代以降最も歓迎されているように映る。

リズム・ボックスのチープなビートで始まるM1のリニアで空間の多いサウンドに「Is This It」の面影を見る人が多いのは良く解るし、Julian Casablancasの相変わらず気怠いヴォーカルもそれなりに魅力的ではある。
ただイメージしていたよりもファルセットが多く、「Is This It」をエキサイティングなものにしていた腹の奥底から絞り出すような凄味の利いた歌唱は殆ど聴かれない。

ギターはコード・ストロークが増えた印象で、Television直系の隙間が多いサウンドがかなり普通の、もっと率直に言えば凡庸なものに変容している。
(どうでも良いが良く考えると随分皮肉なバンド名だ。)
下手にディストーションが使われていない分未だましとも言えるが。

音像全般に如何にもRick Rubinらしい人工的なダイナミクスが横溢しており、事ある毎に同じくRick RubinプロデュースのWeezer「Hurley」を連想させる。
あれ程大味ではないしても、特にJulian CasablancasのヴォーカルがRivers Cuomoそっくりに聴こえて仕方ない(M3のディスコ調なんて特に)。
本作が殊更に酷い出来だとは思わないが、しかし面白いともまるで思えず、やはりファーストはマジックだったとしか思えないという点でもWeezerと被る。