Sufjan Stevens / The Ascension

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先ず浮かんだのはSufjan StevensがBon Iver化したという印象だったが、新作がエレポップらしいと聞き及んだ時点で想像した範囲内ではある。
思っていたよりアグレッシヴな電子ノイズ混じりのサウンドには確かに「22, A Million」や「I,I」に通じるものがあるが、それ程混沌としている訳でもない。

M3等は比較的ストレートなチルウェイヴだし、M14はアコースティック・ギターがシンセに置き換わったかのようなフォーキーな佇まいを残している。
ラストを飾るM15の終盤はアンビエントニューエイジ風だと言ってもいいが、それにしても不自然なほどに電子音のみで構成されており、生楽器の音色は殆ど聴こえない。

Sufjan Stevensのフォーク・サイド以外は良く知らないので、同傾向だという「The Age Of Adz」を聴いているリスナーからすれば今更驚く事ではないのかも知れないが、ビート・プロダクションはなかなかそれなりに堂に入っていて、クレジットを確認する限りでは外部のプロデューサーの関与も無いようで単純に関心する。

声質の類似性も手伝って、Calibouの新作だと言われたとしても信じてしまいそう、つまりある種フォークトロニカ的で、フォーク・ミュージシャンがエレクトロニカを採り入れた類のものとしては非常に精巧だと言っても良いだろう。
(というような視点自体が20年前の感覚だというのも理解してはいるが。 )
とは言えCaribouのようなユーモアやユーフォリア微塵も無いし、只管鬱々としていてBon Iverが垣間見せる希望も無く、どうも今一つ諸手を挙げて絶賛する気にはなれない。