The Avalanches / We Will Always Love You

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船酔いしそうなほどドラッギーで時折アッパーですらあった前作よりチルアウトして、「Since I Left You」に近い本来のドリーミーさが戻ってきた。
各曲がシームレスに繋がる展開は前作と同様だが、よりスムースでDJミックス的で、故に無難で新鮮味に欠けるところはあるが、彼等の本領が発揮された作品であるのは間違いない。

レコードのチリノイズに塗れた音像や、曲の切れ目が曖昧に暈された展開は正にサンプルデリックで、今更ではあるが2000年前後に花開いたヒップホップ/アシッド・ハウス以降の「Pet Sounds」の子供とでも言うようなThe Avalanchesの出自を再確認させられる。
(M4のMGMT、M24のCorneliusの参加はその印象を強化している。)

前作からは幾らかアウト・オブ・デイトな感じを受けたものだったが、不思議と本作にその印象は無い。
Perry Farrell(!)をヴォーカルに迎えたM10からM11に繋がる流れや、Jamie XX参加のM14を始めとして、ディスコ/ハウス調が目立つ点は、昨今のJessie WareやRóisín Murphyの作品ともリンクしているように思える。

M17ではトラップ風のハイハットが聴かれるが、尤もベースはブーンバップ的で、Denzel Curryのフロウも相変わらずオールド・スクール気味。
Denzel CurryはFlying Lotus「Flamagra」に続き、この客演で愈々Danny Brownに次ぐオルタナティヴ・ラッパーとしての頭角を確かにした感がある。
但し「Zuu」を聴く限り特段ジャンルを越境するようなところは無いだけに、このインディ界隈での人気には少し謎も残る。