Bright Eyes / Down In The Weeds, Where The World Once Was

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少しJeff Tweedyを彷彿とさせる舌足らずなヴォーカルや、細部にまで音響に対する拘りを感じさせる点にはWilcoフォロアーな感じもあるが、イントロの冗談めかしたラグタイムはともかくとして、あからさまなカントリーやアメリカーナの引用は無い。
オーケストラルな管弦楽器やアトモスフェリックなシンセが荘厳で豪奢な印象を齎しているが、ソングライティング自体は至ってシンプルでオーセンティックで、これと言ったギミックがあるわけではない。

多くの曲で元The Mars VoltaJon TheodoreやFleaが参加しているが、彼等の技巧があからさまに前面に押し出される事もない。
(シンセが80’sAOR風のM4に於けるテクニカルなドラミングは例外だが。)
Fleet Foxesなんかと較べてもポスト/マス・ロック的な要素は皆無で、節度があるとも言えるが何処か中庸な印象は否めない。

中でも特にストレートなM13等に於ける咆哮するギターや熱の籠もったコーラスからは、しばしばこのバンドがエモに括られるのも解る気はする。
(尤もポスト・ハードコア的な要素は全く聴き取れないが。)
他にもM7に於ける壮大なストリングス等の情感溢れる感傷的なメロディは確かに好ましく、素直に胸を鷲掴みにされる。

とは言えエモに有りがちな暑苦しさは余り無く、傷付いた天使よう、かどうかは正直良く分からないけれども、酔いどれたような辿々しいヴォーカルには寧ろ味わい深さもある。
歌声に関してはPerfume GeniusやFleet Foxesみたいな無難なものよりも余程好感が持てる、というのは完全にオルタナ世代の呪いでしかないのだろうけれど。