Cabaret Voltaire / Shadow Of Fear

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一言で言えばFactory Floorの親のようなサウンド
インダストリアルのゴッドファーザーなのだから当たり前ではあるのだが、余りにもダンサブルなのには驚いた。
M3なんかはテクノ以外の何物でもなく、Richard D JamesのCaustic Window名義の作品なんかが思い出されるし、M6はまるで電気グルーヴみたい。

古臭さを感じないと言えば嘘になるが、チープで悪く言えば少し間の抜けたシンセ・ストリングスやシンセ・ブラスの音色、パーカッションの多用が全体にファニーで珍妙な魅力を与えている。
ディストピックと言うには余りにも愛嬌があり過ぎると言うか(勿論褒め言葉)。

裏拍を強調したM5のビートはドラムンベースのプロトタイプのようだが、そのそこはかとないチープネスには決してテクノ以降の世代には作れないユニークさがある。
無理矢理でも何か一つのジャンルに当て嵌めるとするならば、やはりポストパンクとしか形容のしようが無い。
そう言えばM4には電子音のみで作られた「Metal Box」みたいな風情もある。

充分にリズミックではあるが、印象はリニアで全くファンキーではないのは不思議な感覚で、多くは単調なベースや低音域の空疎さに由来するものだと思う。
思えばThe Pop GroupにしろPILにしろ、リズム・コンシャスでありながらファンクネスが欠落しているというのは、ポストパンクのバンドの多くに共通する一つの特徴であるかも知れない。