タイトル通り2014年のソロ作の続編であるが、前作に辛うじてあったエレクトロニック・ミュージックの残滓は最早跡形も無くなり、ローファイ臭も希薄になって、まるでJohn Caleの作品のようなアート・ロックが展開されている。
要するに随分ちゃんとしていて、最早それが悪ふざけなのかどうかもさっぱり解らない。
ラップともスポークンワードとも付かない歌には相変わらず異物感が満載だが、随所で現れる女声ヴォーカルがオーセンティックな印象を強化している。
声質はInga Copelandに似ているような気もするが本人なのだろうか?
何せ何処にもクレジット情報が落ちていないので確かな事は全く判らない。
全編に渡りギターが曲の基盤を担っている点がその普通さに拍車を掛けているが、チープなドラムマシンのビートにフォーキー&ブルージーなアルペジオを載せたM2には、King Kruleに通じるようなローファイ感覚も残っている。
背景に漂うアンビエンスやノイズの存在がアーティな印象の源泉になっているのは確かで、意識しなければ鳴っている事にすら気付けないようなその在り方は、低音ではないにせよ寧ろドローン的とも言える。
ただどの曲にも必ずそのような要素が存在するという訳でもなく、M10なんかはごく普通のストリングスとアコースティック・ギターを基調にしたごく普通に良い曲。
ピッチシフターで遊んでいるようなM8は例外としても、これ見よがしな実験性やエキセントリックを狙った感覚とは無縁で、実に絶妙な匙加減で結局何がしたいのかよく解らない、というのが奇才たる所以だろう。