Prince / Welcome 2 America

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M1はP-Funk直系の濃厚で粘着質なファンク。
90’sのポップス路線に余り興味が持てなかったが故に、2000年代以降のPrinceをフォローしてこなかった事に今更後悔させられる。
M2以降は寧ろソウル色が強く、M3はスムースなストリングスが心地良いフィリー・ソウル風で、M4はThe Jackson 5にも通じる、牧歌的で多幸感溢れると言って差し支えないスウィート・ソウル。 
Princeがある意味でこんなにもオーセンティックなソウルを演った事が嘗てあっただろうか?
(いや、あったのかも知れないけれども。)

一方でM5やM6を始めとして、80’s風の軽快なポップス路線も多く、2010’sのAORやヨットロックのリヴァイヴァルと共振しているようにも思えるという意味で、Steve Lacyなんかと重なるところもある。
M7では再びファンクが登場するが、P-Funkと言うより70’sのStevie Wonderのようだし、M11はSly & The Family Stoneを思わせるロック寄りのファンク。

総じて最も黒人らしくない黒人音楽を産み出したとも言えるPrinceが、最もブラック・ミュージックに接近した作品だという印象を受ける。
確かに革新的な要素は無いし、Prince自身にとってもやろうと思えばいつでも出来た事ではあるだろう(だからこそお蔵入りさせたのだろう)が、Princeの革新性がごくオーセンティックな才能の上に成り立っていたのが良く解る作品である。

録音された2010年と言えば、未だD'Angeloが「Black Messiah」を出す前で、漸くJanelle Monáeが「The Archandroid」を出した年。
本格的なAORの再評価も始まっておらず、当時世に出ていたとするなら取るに足りないと見過ごされていたのは想像に難くないが、当時と今では受け手側の聴こえ方も大分違うだろう。
その後のBLMに呼応したブラック・ミュージックの隆盛を思えば、やはり逝くのが余りにも早過ぎたと思わざるを得ない。