Liars / The Apple Drop

f:id:mr870k:20211030221056j:plain

M1はチープなNine Inch Nailsといった感じのゴシックなインダストリアル・ロック調で、マイナー・チェンジには違いないが、よくまぁこれだけ毎回違う手が出せるものだと関心はする。
しかも同時期に登場したポスト・パンク・リヴァイヴァルのバンドが今や殆ど表舞台から消えた(そして時代は早くも2回目のリヴァイヴァルに突入した)中にあって、コンスタントなリリースを重ねている事を考えると、縮小版のRadioheadとでもいうような、ある種の畏敬の念も湧いてくる。

シンセ主体のダーク・ウェイヴ調は前作を踏襲しているが、Angus Andrew一人になってしまった混乱をそのまま吐き出したような珍妙さやローファイさは薄れ、良く言えばスケール・アップ、悪く言えば小綺麗に纏まった印象で面白味には欠ける。
過去のLiarsのアルバムに必ず1曲はあった、フックとなるようなキラーチューンも無く、些か冗長という意味ではMark Laneganの近作(でもないか)に通じる。

一方ディストーション・ギターにそれなりの存在感がある曲も多く、M4は聴きようによってはJoy Divisionのよう、と言うより寧ろ声質の近さではBauhausだろうか。
何れにせよ部分的には原点回帰を感じさせなくもない。
(因みにM5は本当に2000年代のRadioheadみたいで少しらしくない。)

中身とは全く関係が無いが、個人的にこれまで割とセンスの良さを感じていたジャケット・デザインに関しても、何らかのコンセプトはあるのだろうけれども、どうも今一つ理解出来ないと言うか、有り体に言えばちょっとダサいと感じてしまう。
その印象も相俟って、微かに、けれども拭い難い停滞感を感じさせる作品ではある。