Lorde / Solar Power

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近年、アメリカのメインストリームのポップ・ミュージックに於けるフォーク/カントリーの存在感が益々大きくなっているように感じられるが、それは2010年代にロックに代わってヒップホップ/コンテンポラリーR&Bデファクト・スタンダードになった事へのある種の保守的な反動でもあるのだろう。

本作のプロデューサーであるBleachersことJack Antonoffは、Lana Del ReyやSt. Vincentの近作、或いはTaylor Swift等を手掛ける、そのようなモダン・ポップ・フォークの中心人物だが、ヴォーカルを中心に据えた如何にもメインストリームなプロダクションの中にも凝った残響処理やブレイクビーツ(M2等はPrimal Scream「Screamadelica」を思わせる)を持ち込んで適度にオルタナティヴ感を演出しているのが見え見えで何ともいけ好かない

それはさて置き、本作でも全編に渡ってアコースティック、またはクリアトーンのギターのアルペジオが曲の基調を成しており、「Melodrama」に較べてぐっとフォーキーになった印象を受ける。
特にM4等は根明なLana Del Reyといった感じで、総じてその影を追っているような印象が常に付き纏う。

「Chemtrails Over The Country Club」の完成度に関しては、Jack Antonoffのプロデュース能力と言うよりも、Lana Del Rey自身の歌唱の表現力やソングライティング力に依るところが大きかったと思うが、Lordeの声や歌唱やソングライティングの能力はLana Del Reyに較べて然程大きく劣っているとは思わない。
にも拘らず全く凄みや深みを感じない、もっと言うならば気楽に聴けるポップス以上のものを感じられない(それはそれで全く悪い事ではないけれど)のは、持っている性根の違いだとしか思えない。