Sault / Nine

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「Untitled (Rise)」「Untitled (Black Is)」の興奮冷めやらぬ内の矢継ぎ早のリリースは、両作と比較するとややビート・ミュージック的な色合いが濃く、M2は(昔の)Ninja Tune辺りからリリースされたとしても違和感が無さそうなアフロ・ブレイクスである、と同時にファンク・ロック的なヴァースもある。
前2作と比較すると生演奏の比重が高く、特にギターに存在感があるという点でMichael Kiwanuka「Kiwanuka」に通じるサイケデリック・ロック臭が漂っている。

Little Simz「Grey Area」のプロダクションからは、90年代中頃のBeastie Boysを連想したものだが、本作のクールで洒脱なモンド感は何処となく初期のLuscious Jacksonを彷彿とさせる(特にM3)。
フォーキーで穏やかなM6やM9なんかは、Cleo Solのプレーンな歌声も相俟ってKostarsのようでもある。

M3の後半にはベース・ミュージック的な感覚もあり、エスニックなチャント的ヴォイスも相俟ってM.I.A.を彷彿とさせる。
異色はオールドスクールなドラムマシンのチープなビートに乗せて待望のLittle Simzがラップを聴かせるM8で、地声だかエフェクトだか判別し辛いエキセントリックな声色がユニーク。
毎度の事ながら実に多様性に富んでいるが、無節操なエクレティシズムは一切感じさせず、引き出しの豊富さと編集センスにまたも関心させられる。

クロージングはNina Simoneなんて名前を連想させるピアノ主体のソウルで、どうもアルバムを60’sソウル風のナンバーで締め括るのが彼等の常套手段であるらしい。
Infloプロデュースの諸作を含め、驚異的なスピードで作品を量産しながらも、そのそれぞれに確かな個性があると同時に、確固たるSaultの型があるというのも悪くない。