SZA / SOS

M4等「Ctrl」の延長線上のトラップ/アンビエントR&Bもあるにはあるが、曲調はもっと幅広く(そして曲数は多く)、総じて言えばよりポップス寄りの作風になった。
M1ではBeyoncéが映画「ドリームガールズ」で歌ったソウル・ナンバーと70’sのゴスペル・ソングのサンプリングが使用されており、全体的にサンプリングへの依存度が高まっている。
ドリーミーな質感は維持しつつ、相対的にシンセ・アンビエンスへの依存度は下がり、楽器演奏の存在感が増して、よりオーセンティックなソウル/R&Bに接近した印象がある。

一方で、仄かなシンセ以外はアコースティック・ギターのみで構成されたM14なんて殆どフォークで、大味なディストーション・ギターを纏った、宛らAvril LavigneのようなM13のティーン・ポップ/ポップ・パンクには流石にやり過ぎの感があり、受け入れ難いしジョークだとしても全く笑えない。
ストロング・ポイントである独特のフロウもこの曲に関しては全く発揮されておらず、只々凡庸としか思えない。

前作「Ctrl」は当時のオルタナティヴR&Bの流行を追い風にして、トラップ・アンビエントR&Bのエポック・メイキングとなったが、そこから5年を経て更なるオルタナティヴを追求している様子は皆無で、よりメインストリームに近付いた印象を受ける。
本作の高評価は赤裸々なリリシズムに負うところが大きいのだろうが、黄色人種の中年男性には全く以って響かない。
まぁ勿論そもそもそんな連中をターゲットに制作していないだろうとは思うが。

冥界からのOl' Dirty Bastardの召還は、RZAへのリスペクトをその名に冠したWu-Tang Clan好きのSZAらしいある種のステートメントなのだろうが、2Pacを召還したKendrick Lamar「To Pimp A Butterfly」の二番煎じという気がしなくもない。
確かに90’sのハードコア・ヒップホップを思い起こさせるこの曲自体は魅力的だが、ここに至る過程が長過ぎるし、他の曲と余りにムードが違うせいか、最早ボーナス・トラックのようだとしか感じられず、トータリティの面では蛇足だったかも知れない。
まぁそれを散漫と取るか、多様性に富んでいると取るかは、聴く人次第だとも言える。