Little Simz / Sometimes I Might Be Introvert

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ファンタジー大作映画宛らの荘厳でシネマティックなオープニングの、些か人を喰ったような大仰さがLittle Simz&Infloのコンビらしい。
まるでディズニー映画のようなインタールードからは、InfloがSault或いMichael Kiwanukaの焼き直しではなく、明らかにしっかりとLittle Simzの為だけに的を絞ったプロダクションを提供している様子が窺われ、言うまでもなくそれは多様な引き出しがあってこそ成り立つものだ。

とは言えやはり主役はLittle Simzのラップで、例えばM3のルーディでゆったりとしたフロウから一気呵成にファスト・フロウに切り替わる瞬間には目眩を覚える程だ。
同トラックではMadlibを思わせるような、テンポは一定のまま微妙にサンプリングのピッチを上下させるドラッギーなプロダクションがフロウの変化を効果的にしている。

アルバムを通じてInfloの一貫性のあるプロダクションがラップを補強しているが、間違いなく逆にLittle Simzの方も多彩なトラックを実に表情豊かな声色とフロウで見事に乗りこなしている。
ラッパーとプロデューサーのコンピネーションとして実に理想的で、この2つの才能が幼馴染だというのは些か奇跡的にも思える。

「Grey Area」と較べるとややレイドバックした印象で、M6やM18のようなユーフォリックでコンシャスネスを感じさせる、Infloのソウル愛が詰まったナンバーがハイライトとなっている。
一方で「Offence」を彷彿とさせるM8やグライミーなM12のようなアグレッシヴ且つエキセントリックなトラックも健在で、ブギー・ファンクかオールドスクール・エレクトロを取り込んだかのようなM13や、M16〜M17と続くアフロビート風も充分にエキサイティングだ。
期待に寸分違わぬ充実作だと言って良い。