Courtney Barnett / Things Take Time, Take Time

f:id:mr870k:20211222000030j:plain

ダイナミックなバンド・サウンドは鳴り潜め、威勢良くギターが唸りを上げる瞬間も皆無。
相変わらずギター・ロックの範疇にある音楽には違いないが、Warpaintのドラマーのサポートの下で、控えめに言ってもチープなリズム・ボックスやキーボードを多用して、宅録感/ローファイ感が横溢した作品に仕上がっている。

M4はちょっとニューウェイヴィな感じがするし、M5も聴きようによってはNeu!のモータリック・ビートを彷彿とさせる新機軸。
ファズが無い分全般的にスペースが多く、少し寂しい感じがしないでもないが、成功体験をなぞる選択をしていないだけでもチャレンジングであるとは言える。

どの曲もヴァース+コーラスのシンプルな構成で、M2に至ってはヴァースのみが繰り返される。
要するにアンチ・クライマックスで、ロック的なダイナミズムや過剰にドラマティックである事を忌避するような感覚があるのは、間接的/逆説的にコロナ・パンデミックと決して無関係ではないだろう。

M1こそ物憂げだが、神妙な面持ちでアルバムが始まるのは前作に引き続きの事なので、単に彼女の性向に依るものだろう。
メロディは基本オプティミスティックで殊更内省的という訳でもないし、極めてフラットな曲調は如何なる特定のエモーションにも没入する事はない。
パンデミック下のロックダウンによって人と会う機会が大幅に減少し、それでも淡々と続く極めて地味な日常を切り取った作品、といった想像をさせるという意味で、Teenage Fanclubの近作に通じるものがある。