Japanese Breakfast / Jubilee

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宛らポップのショーケースのようなアルバムだ。
M1はJulia Holter「Have You In My Wilderness」のインテリジェンスを薄めたような(と言っても決して頭が悪そうという意味ではないが)チェンバー・ポップで、M2は直球のディスコ調。
M4のシンセ・ポップのギターはThe Flipper's Guitar時代の小沢健二のプレイを彷彿とさせ、ネオアコとか渋谷系とかいったタームを連想させたりもする。
(余り関係無いがプレーンでガーリーなイメージを喚起する歌声はBuffalo Daughter大野由美子みたいで嫌いではない。)
M7では逆にアコースティックなギター・ポップにテクノ・ポップ風のヴォコーダーを組み合わせており、単純なアイデアではあるが殊の外新鮮に感じられたりもするから不思議なものだ。

フレンドリーなメロディは時にJポップのように単純明快で、特にM8は小林武史辺りが手掛けたと言われても信じてしまいそうだし、M9はまるで松田聖子か誰かの往年のヒット曲かのようだ。
本人はコリアン・アメリカンだという事で、そのプロジェクト名が些か意味深にも感じられ、何か日本の歌謡曲に特別な思い入れでもあるのだろうか。

M6のディストーションの効いたシンセやリヴァービーな音像はBeach Houseのようなドリーム・ポップを連想させ、フォーク・ロック調に始まって終盤にシューゲイズ的な展開を見せるM10は羅針盤みたいでもある。
シューゲイザー的な要素やアコースティック・ギターを基盤にしたソングライティングとポップなメロディ・センスは、プロデューサーしてクレジットもされているAlex Gとの共通項も感じさせる。

とは言え宅録を強調するようなインディ臭さはまるで無く、流石はグラミーにノミネートされるだけあって極めてウェルメイド。
この手のインディ・ポップにしてはクラブ・ミュージックからの影響を殆ど感じないのも特徴的で、ブラック・ミュージック由来の要素もほぼ皆無と言って良く、Jポップ的に感じられる理由はその辺りにあるのかも知れない。