Young Thug / Punk

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元よりYoung ThugにはFutureと共に現在のシンギング・ラップの隆盛を作った張本人という印象があるが、ここまでポップ・ラップの波に呑み込まれてしまっているとは。
ギターの存在感が強いトラック群はLil Nas Xにも近く、ヒップホップが人種を超えて真に大衆的なレベルでポピュラリティを獲得するには、やはりロック的な意匠が不可欠という事なのだろうか。
(安直この上ないがやはりRun-DMC「Walk This Way」に思いを馳せずにはいられない。)

勿論一定の多様性は認めつつも、今更ではあるが広義のヒップホップ/ラップ・ミュージックは本当にアメリカの歌謡曲に成り下がったという事なのだろう。
ロックで言うと80‘sのヘア・メタルみたいなものだと思うが、特にアルペジオの弾き語り風のM1やアコースティックなPost Malone参加のM8等は死ぬ程陳腐で吐き気すら催す。
こんな幼稚なメロディで胸を焦がすティーンなんて果たして実在するのだろうか。

一方でピアノ中心のリリカルなトラックも多く、SlowthaiやGhetts等の近年のグライム/UKヒップホップと共振する感じもある。
クレジットの何処にもその名は無いが、M5で聴こえるファルセットは確かにJames Blakeのそれを思わせる(遂にその声はある種のジャンルのサウンドシグネチャになってしまったのだろう)し、微かにラテン・ポップ風のM9はAJ Traceyみたいで、独特のフロウも手伝って新手のダンスホールと言った方が近いかも知れない。

ヒップホップとしては流石にどうかと思いはするものの、M14やM16、M18等の叙情性にはストレートに胸に迫るものも無くないし、M7やM11の素朴な感じのトラップも今となっては多少微笑ましくもあり、実を言えば全く嫌いなトラックばかりとも言い切れない。
Lil Uzi Vertなんかもそうだったが、解り易いポップネスだけで何となく聴けてしまうからそれはそれで厄介。