Dave / We're All Alone In This Together

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ピアノや管弦楽器中心の上音はメランコリック且つシアトリカルで、M1の物悲しさに至っては今にも母さんが夜鍋を始めそうな程だ。
KanoやGhettsの系譜に連なるリリカル系グライムに分類出来そうではあるものの、Stormzyを迎えたUKガラージのビートを採用したM3等、皆無という訳ではないにせよ、AJ Traceyなんかと較べるとビートにもフロウにもグライムらしさは希薄。

ラテンポップ調のM6やM7はAJ Traceyにも通じるし、UKらしいリズムの多様性はHeadie Oneとも共通しているが、正にその均質性こそが、UKドリル以降のグライム第3世代に今一つ熱狂出来ない要因にも思える。
そういう意味ではやはりSlowthaiのユニークさは群を抜いている。

トラックで言うと、Mount KimbieのDominic Makerが手掛けたM4、M10の2曲がやはり突出 している。
M4はゴスペルのサンプルがMount Kimbieらしいと同時に、Kanye Westのチップマンク・ソウルっぽくもある。
James BlakeとのM10の詩情はアルバムのハイライトだが、ゴーストリーな歌声の存在感が強すぎて最早James Blakeの曲だとしか思えない。

Maker/Blakeのコンビは、Slowthai「Feel Away」に引き続きでUKヒップホップを牛耳ろうとでもしているかのようだ。
「Feel Away」との連続性はヴァース/コーラスの伝統的なヒップホップの形式を無視した組曲的な構成に顕れており、その点では今や完全に失脚したかのようにも見えるKayne Westの意思を継承しているかのようにも思える。
そう言えば記憶している限り、ヒップホップの文脈で最初にJames BlakeをフックアップしたのがKayne Westだった事を考えると、最初から何処か通じ合うところがあったのかも知れない。