Jpegmafia / LP!

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SEの多さやサイケデリックでドラッギーな音像はEarl Sweatshirt「Some Rap Songs」に通じるが、もっとファンクネスもメロウネスもあって要するに至極ポップ。
声質こそやや没個性だが、割とオールドスクールなスタイルのラップのフロウはタイトでリズミックなフックに富んでいて快楽指数は高い。

表面的なサウンドは全然違うが、2000年代初頭に夢中になって聴いたアンダーグラウンド・ヒップホップ、例えばCompany Flow〜Definitive Jux周辺やAnticonに近い感覚がある。
それはつまりエクスペリメンタルではあってもアンチ・ポップではない(その名に反してAntipop Consortiumだってポップだった)という事だ。

トラップの要素は希薄で、少しミドルスクール風のM9を始めとしてファットなブレイクビーツの存在感が際立っており、荒削りではあるが例えばM10のメロウネスにもTyler, The Creatorに通じるものを感じないでもない。
クラウド・ラップやトラップを通過した後の、そのカウンターとしてのブレイクビーツ復権を感じさせるという意味でやはりBrockhamptonと共振しているように思えるし、オルタナティヴな存在感という点ではDanny Brownと重なる部分もある。

一方M1の乱反射するシンセのアルペジエイターやM17の高速で刻まれるリムショット等の要素は00年代初頭のエレクトロニカグリッチ・ホップを思い起こさせる。
かと思えばエモ風のギター・サンプルがいなたさを逆手に取ったかのようなM4(こういうトラックはAntipop Consortiumにも確かにあった)のようなトラックもあり多様性に富んでいる。
けれども寄せ集め感は皆無で確かにアルバム全体に通底するセンスを感じさせ、Tyler, The CreatorやEarl Sweatshirtと同様に自らトラック・メイカーを兼ねるラッパーはやはり強いと思わされる。