Arcade Fire / We

宛らU2みたいに勇壮で些かヒロイックなM1の冒頭こそ想定の範囲内だが、中盤でシンセ・ベースのアルペジオを合図にしてエレクトロ風ともディスコ・パンク風とも呼べる曲調に変化するのには多少の意外性もあった。
続くM2の4つ打ちのドラム・ビートにもTame Impala「The Slow Rush」に於けるハウス・ミュージックの導入と相通じるものがある。

まるで違うバンドのようで驚きはあるが(と言っても「The Suburbs」しか知らないのだが)、如何にもロック・バンドによるダンス・ミュージックの借用と言った感じが些か古臭く、かなり今更な感はある。
と言っても元々今更にも思えるような大仰さが却って新鮮なバンドではあった訳で、 殊更失望するような事も無い。

M3は「Imagine」みたいに始まって、Queen宛らの大仰なロック・オペラ風に発展する。
男女混成のコーラスや管弦楽器はBlack Country, New Roadを連想させ、彼等に対してArcade Fireが頻繁に引き合いに出されるのは良く解る。
因みにM5は振り切れたポップネスと言い歌い方と言いVampire Weekendそっくり。

M4前半の華々しく芝居じみたギター・ストロークThe Whoみたいで、何故だがこういう大袈裟なロマンティシズムが彼等に限っては(でもないか)嫌いではない。
直線的なベースとピアノの連打と熱量迸るドラミングが牽引する後半の疾走感には相変わらず堪らないものがある。
然してオリジナリティがあるとは思えないし、時流に乗るのが上手い訳でもないが、何だかんだ言いつつ結局絆されてしまうような不思議な魅力のあるバンドだと改めて思う。