Kehlani / Blue Water Road

Sydの新作(未聴)は「Fin」から随分モード・チェンジしている模様だが、そのSydと懇意(?)のKehlaniの新作は、ビートの多くがトラップ・ベースでありながら、抑制の効いた上物と歌唱によって全体を覆う至ってクールな(要するエモくない)質感が確かに「Fin」を彷彿とさせる(特にM2、M6、M7等)。

二人は声質もヴォーカリゼーションも良く似ていて、揃って客演したDisclosure「Birthday」でも区別が難しかったのを思い出す。
(Kehlaniの方がもう少しフェミニンな感じがするけれど。)
と言っても本作が「Fin」の二番煎じという訳では全くなく、コーラスの効いたギターで始まるブリージンなM1は何と懐かしいKostarsを即座に連想させるし、M3やM9のドリーミーでレイドバックしたムードはSZA「Ctrl」にも通じ、そのスウィートネスは確かに「Fin」には無かったものではある。

加えてM4とM5のビートは90‘sマナーのブーン・バップで、M4はフロウも相俟ってLauryn Hill「Doo Wop (That Thing)」を彷彿とさせる。
M5は些かクリシェ的な下降するシンセのベース・ラインとギター・カッティングが却って新鮮で頗る格好良く、Justin Bieberの歌声が宛らR. Kellyのようにも聴こえてくる(というのは勿論物の喩えだが)。

クールネスとスウィートネス、モダニティとノスタルジアがバランス良く混ざり合っており、それ故突出したところが無くある種中庸で没個性な印象を受けるのも確かだが、聴いていて心地の良い良盤には違いない。
わざとらしいエキセントリックさが鼻に付く盆百のオルタナティヴR&Bよりは余程好感が持てる。