The Smile / A Light For Attracting Attention

冒頭のくぐもったアナログ・シンセの音は「Kid A」/「Amnesiac」期のようだ。
Sons Of KemetのTom Skinnerのテクニカルなドラミングに、ロウな音色の単音ギターのアンサンブルが絡むM2も「Hail To The Thief」にあったような曲調だし、M4も「Pyramid Song」に近いムードを感じさせる。

M3は変拍子でこそあるがストレートなギター・ロックと言って差し支え無く、敢えてRadioheadのカタログに当て嵌めるなら「Pablo Honey」かなと思うものの、過去の曲には無いドライさを感じさせ、ちょっとZazen Boysみたいだと思ったりもする。
M7もマス・ロック的だしM12は更にストレート・アヘッドで、「Hail To The Thief」以来最もロック寄りな作風と言って良く、その辺りが欧米のメディアが挙って本作を歓迎している理由なのだろうか。
だとしたら「Hail To The Thief」自体の評価が相対的に低い気がするのは何故なのだろう。
自分は結構好きなのだが。

M5等ではJonny Greenwoodのクラシカルなストリングス・アレンジが存分に披露されており、その点では「A Moon Shaped Pool」からの流れが自然に踏襲されていると言って良い。
要するに新しいバンドで何かこれまでとは違う事をやってやろうといった気負いが(戦略的な原点回帰でさえ)一切感じられない。
となるとこの恐ろしく名前のダサい新人バンドのレゾンテートルが一体何なのかが気になるところではある。

Tom Skinnerの存在が触媒になった可能性は高いと思うが、普段Philip Selwayに求めているドラム・プレイと大して違うようにも思えない。
ジャムする中で自然と出てきたものをコンパイルしたといった感じのカジュアルさで、大騒ぎする程の作品だとは到底思えないが、それでも一定の完成度に仕上げるところは流石だとは思う。