Whatever The Weather / Whatever The Weather

Aphex Twin「Selected Ambient Works」に準える声もあるようで、確かにM10等は解らないでもないものの、個人的にはそれよりも例えばM1の柔らかなシンセ・アンビエンスが醸し出す豊かな歌心のようなものからGlobal Communication「76:14」を想起させられた。
その印象はM2冒頭のシンセ・シーケンスまで引き継がれるが、マシニックでグリッチーなビートが挿入されると、一気に「Amber」や「Tri Repetae」の頃のAutechreを彷彿とさせるような如何にもエレクトロニカといった感じになる。

M3にはエレガントなブレイクコアといった趣きがあり、やはり「Reflection」同様に90’s後半〜00’s初頭の非ダンス志向のエレクトロニック・ミュージックが思い起こされる。
最近ではHuerco S.もその時代のIDMエレクトロニカの影響を口にしていたが、自分が当時どっぷりと嵌まったシーンが、一回り以上も年の離れた若者達を今なおインスパイアし続けているというのは単純に嬉しいものではある。

但し本作のサウンドに関して言えば、(Global CommunicationとかAutechreとか言っておきながら何だが)直接的には特定の欧米のアクトとは結び付かず、寧ろその溢れ返るメロウネスから、SuzukiskiとかRei Harakamiといった日本的な叙情性を強く感じさせる人達の作品に近い印象を受ける。
ここ日本で特にLoraine Jamesの人気が高いような気がするのも強ち気のせいでもないのかも知れない。
敢えてヨーロッパで挙げるならばGold Pandaなんかに近いだろうか。
そう言えばリリース元も同じGhostly Internationalだ。

Rei Harakamiと言えばM4やM10なんかのノンビートのトラックでは、ディレイの多用によって一定のリズムが産み出されているが故に、単純にアンビエントと呼ぶのが憚られるようなところに於いても共通する感覚がある。
全く以って余計なお世話ではあるが、思わずRei Harakamiが生きていたら気に入ってくれただろうか、等と考えてしまったりもする。