Bobby Gillespie And Jehnny Beth / Utopian Ashes

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バラード主体という点や、M3のアーシーなブラスやM4のカントリー・ロック調が全盛期のThe Rolling Stonesを彷彿とさせるという点で、「Give Out But Don't Give Up」が比較対象に挙がるのも解らなくはないが、「Rocks」のようなギター・ドリヴンな曲は全く無く、どちらかと言うピアノ中心のプロダクションは、ブルーズやゴスペル、ロックンロールよりも寧ろフォークやポップスと呼ぶ方が自然だという意味で、(イメージだが)The Walker Brothersなんて名前が思い浮かぶ。

その結果、物凄いカラオケ感があるのだが、それでもこんなに魅力的に響くのはどうしてだろうか。
Bobby Gillespie本人が胸を張る程にはSavagesのヴォーカリストの歌声との相性が特別に良いとは今一つ思えない。
と言うかJehnny Beth自身に余り突出した存在感を感じる訳ではない。

やはり本作の最大のチャームポイントは、甘く且つ絶妙にローファイなBobby Gillespieの歌声という事になるだろう。
ソロ・アルバムだったとしても大して変わらなかったであろうという意味で、確かにBobby Gillespieのヴォーカリストとしての魅力を、多分Primal Screamのどのアルバムよりもストレートに伝える作品だと言える。

リリックのテーマは熟年離婚(少し曲解かも知れないが)という事で、基本的には喪失を連想させる曲タイトルが多いが、メロディは至って大らかなのが良い。
M1のオーケストラルなロックはまるで「ロッキーのテーマ」のようだし、M2のシャンソン風のワルツ等、Primal Screamでは絶対に聴けないであろう曲調は企画物ならでは。
キャリア40年近いというのに、未だこんな引き出しがある事には本当に驚かされる。