Danger Mouse & Black Thought / Cheat Codes

埃を被ったソウルにオルガンを多用したサイケデリック・ロックエスニックな要素を調合したレトロな音像が如何にもDanger Mouseらしい。
ロック系の仕事が多い人だけに、相変わらず良くも悪くも没個性なBlack Thoughtのラップと併せて聴く事で、ヒップホップのトラック・メイカーとしてのユニークな魅力を再確認出来る内容になっている。

そのスキルに疑いようは無く、別に貶すつもりも全く無いが、Black Thoughtの華の無さ(声色やフロウがCommonに似過ぎたのが不運だったと言っても良いかも知れない)を補うように豪華なゲスト・ラッパーがフィーチャーされている。
特にA$AP RockyとRun The Jewelsの二人が参加したM9は、2000年代には想像が付かなかったような面子のマイクリレーに感慨深くなる。

他にもRaekwonやJoey Bada$$に故MF Doom、Conway The Machineといった錚々たる面々が参加しているが、何処か皆声域が似ているからか、ムードはアーシーで統一感があり、その点はDanger Mouse繋がりで招聘されたであろう唯一のシンガーであるMichael Kiwanukaについても共通している。

正直地味と言えば地味だし、各メディアがほぼ満場一致で絶賛している理由は今一つ判然としないけれど、間違い無く佳曲は多いし、第一この面子で例えばトラップとかヒップ・ハウスみたいな浮かれた作風でも何だか嫌なのは確か。
古き良きサンプリング・ベースのヒップホップ愛を喚起させる良盤だが、Kenny Beatsのソロが良過ぎて若干霞んでしまったのは何ともアンラッキーとしか言いようが無い。