Santigold / Spirituals

ラヴァーズ・ロックとドリーム・ポップを掛け合わせたようなM1は拍子抜けする程牧歌的で、一先ず意外性のあるオープニングだとは言える。
ニューウェイヴィなM3で漸くM.I.A.エピゴーネンというイメージ通りの脱力ラップが聴けるが、続くM4は再びレイドバックしたダブでこれがまた悪くない。

M1とM4は共にBoys Noizeが手掛けており、Santigoldとの組み合わせは否応無く10余年前にM.I.A.「Maya」でDiploがプロデュースしたラヴァーズ・ロック風の数曲を思い起こさせるが、それらの楽曲が明らかにアルバム全体の足を引っ張っていたのと較べると、本作は余程巧くやっている
(まぁ尤も「Maya」の場合は「Born Free」なんかの激ノイジー路線との食い合わせが余りに悪かったというのもあるが)。

M8もアフロ・カリビアン風で、グローバル・ビーツとニューウェイヴを組み合わせたような音楽性自体に然程驚きがある訳では無いが、従来のイメージに近いアグレッシヴなエレクトロ・パンクはM10くらいのもので、全編に渡ってリヴァーブが産み出す何処か霊妙とでも表現したくなる音像が本作にプラス・アルファを加えている。

Boys Noizeの他にはM6とM9にSbtrktが参加していて、プロデューサー陣の名前は懐かしめだが、両者共にイメージするエレクトロやブロークン・ビーツ/フューチャー・ガラージとは一風変わった作風を披露している
(尤もM6のソウルフルなコーラスやバウンシーなシンセ・ベースはSbtrktらしいと言えばらしい気もするが)。
Santigold自身を含め、10年以上前にキャリアのピークを過ぎたベテラン達が団結して、トレンドに寄せる訳でもなければ昔取った杵柄に固執してリヴァイバルを狙う訳でもなく、軽やかに新しいサウンドを模索している様子が窺えて好感度は高い。