Scuba / Personality

ダブステップの拡散が齎した「ポスト・ダブステップ」を、今のところ最も象徴するのがJames BlakeとMount Kimbieであるという意見が然して個人的なものだとは思わないが、ダブステップの「次」という意味では、RuskoやSkream & Benga = Magnetic Manが種を撒き、アメリカで開花したブロステップ、或いはHotflushやHessle Audioが推進するテクノ/ハウス回帰もまたその一つの傾向として捉える事が可能なのではないだろうか。

後者は先述の2レーベルのコンピレーションの他に、ダブステップとテクノの接合に先鞭を付けた2562やMartynの近作にも認める事が出来たが、最初に自分にその傾向を印象付けたのは、何と言ってもHotflushの「Back And 4th」に収録されたScubaの「Feel It」で、そして本作でScubaはそのベクトルに更に数歩足を踏み込んでいる。

まずアルバムは拍子抜けするようなオールドスクール・エレクトロ(2562「Fever」にもエレクトロの要素は確認出来たが、言われてみれば2ステップの2/4のキックのバウンシーな感じはエレクトロに通じなくもない)で始まり、続くM2ではトランシーな上モノ(という表現が既にテクノっぽい)が、スモークを突き刺すレーザービームの光景をフラッシュバックさせ、M3のロッキンな2ステップは確かにThe Chemical Brothersなんかを思い出させるという点で、ブロステップとはまた毛色の違った大箱志向のポスト・ダブステップが全編に渡って展開されている。

ドラムンベースのリズムやシカゴ・ハウス風のベース・ラインにデトロイト・テクノを思わせるシンセ/ピアノ・リフ、そして何より身悶えする程古臭いレイヴィなヴォーカル・チョップといった要素からは、過去20余年のエレクトロニック・ダンス・ミュージックの影響を幾らでも挙げられそうな一方で、ダブステップはおろかモダンなベース・ミュージックとの接点は最早殆ど見付けられない。

それはまるでダブステップなど無かったような、と言うよりもむしろ積極的な脱ダブステップの身振りであるようにさえ感じられるという意味で、単なるレトロ趣味を超えた確信犯的なリヴァイヴァリストとしてScubaを再認識する。
これもまたダブステップの帰結の一つの極点には違いない。