Kaitlyn Aurelia Smith / Let's Turn It Into Sound

まるでMax Tundraのようなイントロでポップに振り切れたかと思わせておきながら、やはりその内容は一筋縄ではいかない。
M1の曲調は宛らテレビのチャンネルをザッピングするかの如く(喩えが古いか)ころころと変わり、且つその其々が潔いまでに分断されており、何処から何処までが1曲なのかさっぱり解らない。

M2以降では歌が中心に据えられていると言って良いが、そのメロディは至って奔放でポップ・ソングのストラクチャは完全に放棄されている。
歌物と言うよりは声のシンセシスによるミュジーク・コンクレートといった佇まいで、感触してはOPN「Replica」なんかに近い。
或いはある種の声楽のようという意味ではBjörkと結び付ける事も可能かも知れない。

断片的ではあるものの、オールド・スクール・エレクトロのようなフレンドリーなビートが相変わらずストロング・ポイントとして作用している。
徹底して取り留めは無いし、解り易いキラー・チューン等も皆無だが、耳を鷲掴みにされるような魅力的なビートとメロディが山程散りばめられている。

エレクトロニクスと共に器楽音も多く使用されていた「The Kid」と較べると、音色やサウンドのスタイルの幅はぐっと狭まった印象がある。
代わりにアルバムとしての統一感や凝集性が増して、Kaitlyn Aurelia Smithの作家性やそのユニークネスがより解り易く提示された快作だと言って良いだろう。