Oliver Sim / Hideous Bastard

Romyが居ないだけだから、当然The XXのサウンドとそう大して違わないが、上音が多彩でギターが相対化された分、Jamie XXの作るトラックが俄然存在感を放っており、これがまた憎たらしい程センスの良さを感じさせる
(ところで豊富なレア・グルーヴの引き出しと言い、InfloとJamie XXに共通項を見出してしまうのは自分だけだろうか?)。

独特の響きを持ったシンセ・ベースの音色や、大胆だが不思議と大仰にはならないストリングス・ワーク等、Jamie XXのサウンドシグネチャが諸所に散りばめられており、UKガラージとゴスペル、と言うよりもドゥーワップが出会ったかのようなM8のビートは、昨年のJamie XX来日時のプレイでもハイライトだった「Gosh」を思い起こさせたりもする。

Oliver Sim自身の低音の声色も充分に魅力的で、その色気はDavid BowieやBryan Ferry、或いはDavid Sylvian等のグラム・ロック〜ニュー・ロマンティックのヴォーカリストの系譜に連なるが、決して鬱陶しさは無い。
魅力的なシンガーを同時に2人も抱えているというのは、The XXの強みの一つなのだろうと改めて思う。

こうなると俄然今度はJamie XXプロデュースでRomyのソロ作品も聴いてみたい
(今年のフジロックに出演するようなので期待度は大)。
ラストの何処か希望を感じさせる曲調はあの感動的だった2017年の「I See You」を彷彿とさせ、The XXとしての新作も実に待ち遠しい。