Mahalia / IRL

アルバム冒頭のドリーミーで浮遊感溢れる音像やパトワ風の節回しから、SZAに対するイギリスからの回答といったイメージが湧き起こる。
サポート役のラッパーもStormzyにKojey Radicalと、まるでイギリス代表のMahaliaを応援するかのような客演だが、Stormzyに関してはすっかりゴスペル・シンガーと化してしまっている。

M2のビートは躁的なハイハットと跳ね回るシンセ・ベースがトラップと言うよりUKドリル以降を感じさせると同時に、アタックが強く解像度の高いドラム・マシンの質感が90年代的でもあり、10年代オルタナティヴR&Bのトラップ・ミーツ・アンビエント的なプロダクションとは一線を画した印象を受ける。
モダンとレトロのバランスという点に於いてはKehlani辺りに近い気もする。

コーラスの効いたギターやストリングス、エレピの多用はネオ・ソウル的で、バック・トゥ・90’sな印象に拍車を掛ける。
Kojey Radicalを迎えたヒップホップ・ソウルのM10なんかはもろにLauryn Hill「Doo Wop (That Thing)」を連想させるし、明らかにErykah Baduのオマージュと思しきフロウも登場したりして、感心はしないがまぁ決して嫌いになれない音楽ではある。

特にM3やM8といった楽曲のシングアロング特化型の解り易いコーラスはちょっと気恥ずかしい程キャッチーで、例えばSolangeなんかとは対極にあると言って良い。
イーヴン・キックのビートと浮遊感溢れる上音がSerpentwithfeet「Fellowship」に通じるハウシーな感覚を惹起するM12がちょっと異質なのを除けばオルタナティヴな要素は皆無だが、そのポップネスには確かに否定し難いものがある。