Young Fathers / Heavy Heavy

以前からそうだがラップらしいラップは愈々完全に消滅し、最早全くヒップホップではない。
M1冒頭の呪術的でヒプノティックなグルーヴは少しCanを彷彿とさせるし、祝祭的なM3等はAnimal CollectiveやDan Deaconなんかにも近く、M4のシンセ・レイヤーにも確かサイケデリックな感覚が無くもない。

エスニック・ミュージックとシンセ・ポップの要素を併せ持っているという点ではBrian Eno & David Byrne「My Life In The Bush Of Ghosts」の遺伝子を感じさせなくもない。
M2ではマシニックなのにスウィングするリズムがBattles「Atras」を思わせたりもして、敢えて言うならやはりポスト・パンクとかポスト・ロックの方が近い気がする。

トライバルなビートとパイプ・オルガンのような上音の組み合わせが生み出す、聖俗が混濁したような感覚は相変わらずだが、本作ではよりホーリーな音像が前面に出てきた印象を受ける。
それは最近のゴスペル的意匠の頻出(例えばStormzy「This Is What I Mean」やLittle Simz「No Thank You」等)と共振するようでもあり、中でも特にネイティヴ・アメリカンの英雄の名を冠したM5は抒情的ですらある。

決してドラスティックな変化ではないが、ふざけた感じや珍妙さ、フリークネスは減衰し、何処となくシリアスになった印象を受けるのは、当然時代や社会背景を反映している部分があるからなのだろう。
それでも単に沈鬱だったり神妙な面持ちにはならずに、基本的にはオプティミズムを感じさせるところがこのバンドの良いところだと思う。