Jpegmafia & Danny Brown / Scaring The Hoes

現代オルタナティヴ・ヒップホップ2大巨塔の夢の共演と言っても過言ではないだろう。
今のところフィジカルのリリースは無さそうなので、アルバムというよりもミックス・テープ的な位置付けなのかも知れないが、企画物だけに良い意味で肩の力が抜けてやりたい放題やっている印象がある。

音像は荒くローファイだが、両者共にソロ作品よりも遥かにアッパーで、オープニングからしてウォンキーと言うかHudson MohawkeかRustieみたい。
同じく女声ヴォーカル・チョップやジャングル風のブレイク・ビーツを採用したM5と言い、ハイパーなプロダクションが本作を特徴付けている。

但しソースがソウルやファンクやジャズだけではないというだけで、サンプリング・ループとドラムマシンによるビートという最も基本的なヒップホップの構造に即している、という意味で同時にプリミティヴな魅力も有している。
ネタの面白さも本作の魅力で、ファミコンのCMか何かと思しきサンプリングのカットアップと、祭囃子のような珍妙なループが鮮烈なM4はある意味で和モノ使いを拡張するかのよう。
M9でも日本のアニソンのサンプリングが用いられており、レア・グルーヴとしての和モノの価値上昇を実感させる。

勿論魅力はトラックだけでなく、相変わらずエキセントリックなDanny Brownの声色とフロウがスキゾフレニックなトラックと抜群の相性を見せており、声がハンサムな分やや没個性なJpegmafiaのラップを見事に補完している。
現代オルタナティヴ・ヒップホップ最強という意味で、2020年代のBlackstarとでも呼びたくなる名コンビである。