Squid / O Monolith

構築的で精巧だが決してマシニックにはならず、演奏のダイナミズムとのバランスが取れたミキシングに仄かにポスト・ハードコアの残滓が感じられるという点で正にTortoiseを連想させ、John McEntireがバンドの期待に応えて良い仕事している様が窺える。
音色の面でもシンセやコルネットが存在感を増し、「Bright Green Field」と較べるとテンポもスロウな楽曲が多い。

ヴォーカルは相変わらずJames Murphyみたいだが、如何にもポスト・パンク的なアトーナルな瞬間は比較的減ってメロディックな瞬間が増えた印象を受ける。
Talking Heads「Remain In Light」にインスパイアされたというだけあってパーカッシヴな要素が増えた印象があるが、それが解り易くファンクネスには直結せずあくまでリズムは直線的で、徐々にカオティックになっていく展開や不協和音を塗したアルペジオ等のSonic Youthの遺伝子も健在だ。

大成功を収めたデビュー・アルバムの後の凝ったセカンドという点ではBlack Country, New Road「Ants From Up There」とも共通している。
デビュー・アルバムというのは多くの場合言わばアマチュア時代のベスト・アルバムである訳で、続く作品で自己否定したくなるという心情は良く解る。

そのメカニズムは今も昔も変わらないもので、Beastie Boys「Paul's Boutique」なんかはその成功例だし、逆にThe Stone Rosesの「Second Coming」は失敗例の最たるものだ。 
という事を鑑みると、ブレイク後のセカンド・アルバムは偉大なバンドになる為の資金石だと言っても過言ではないだろう。
そういう訳で本作についての態度は保留にしておこうと思う。