Noname / Sundial

全編に渡ってM11にも参加しているCommonの「A Beautiful Revolution」或いは「To Pimp A Butterfly」に近いリリカルなジャズ・ヒップホップが展開されており、控え目に言っても佳曲だらけ。
特に80’s後半から90’s初頭のミドル・スクールを思わせるリニアで疾走感溢れるスムースなフロウで、Kendrick Lamarの他にはRihannaやBeyoncéといった同胞の名前を並置しながら自らをレペゼンするM6が頗る格好良い。

トラップの要素は皆無だが、M2等のパーカッシヴなビートにはアフロ・ビーツと通底する感覚が無くもない。
ボサノヴァ風のリズムやアフロ・ビート調のホーン等が醸し出すアーシーなムードはSampa The Greatと被るし、スムースで表情豊かなフロウやレイドバックした声質はLittle Simzとも重なる。

Little Simzと言いKojey Radicalと言い、コンシャス・ヒップホップのメッカがすっかりUKに移った感のある今日この頃だが、Kendrick Lamarは別格だし、単純にコンシャス・ラッパーと呼べない複雑性こそ彼を巨大な存在した一因であるとも言え、アメリカの比較的若い世代(と言ってももう30オーバーではあるが)からこのような表現が聴ける事に、Native Tongueから続く系譜が未だに途絶えていないという感慨が湧いて嬉しくなってしまう。
徹底してオフビートのフロウやシカゴという出自も併せて、正にフィメール版Common、或いはその後継者と呼ぶに相応しく、非の打ちどころが無いのが却って没個性という悲しい存在感まで何処か似ている。

ところでアメリカのコンシャス・ヒップホップと言えば、Denzel Curryも「Melt My Eyez See Your Future」でそちら方面に舵を切ったかと思いきや、フジロックのステージではアッパーなトラッパー振りが健在で、やはり単なるヒップホップ・マニアだったかと思わされた。
まぁそこが彼の良いところなのだが。