J Hus / Beautiful And Brutal Yard

シアトリカルなストリングスがギャングスタ・ラップ風のイントロは、確かに土着的なイメージを喚起するホーンやパーカッションといった要素もあるものの、正直UKドリルとどう違うのか良く判らず、何処からをアフロ・ビーツ/アフロ・スウィングと呼べば良いのかの判断はやはり難しい。
M2はもう少し判り易いアフロ・ビーツで、確かに全体的にスネアがシンプルに3拍目の位置で打たれるビートが少なく、やはりスネアが肝なのだろうと思われる。

Drakeを迎えたM3は弱めのイーヴン・キックに対してパーカッシヴで賑やかな中低音域が誤用を承知の上で寧ろアマピアノ的にも思え、カリンバ風の音色も手伝って解り易くアフリカン。
(因みにこのトラックに於ける、転がりながら流れ落ちるようなユニークなフロウで初めてDrakeに関心させられた。)
M4もビートの構造は似通っているが、ホーンの音色が入ってくると途端にぐっと本家のアフロ・ビートに近い印象が強くなる。

パトワ訛りのトースティングとラップの境界線は限りなく曖昧で、単なるグライム/UKヒップホップの進化版/最新版というだけでなく、UKならではのダンスホール/ラガ・カルチャーとのキマイラであると言えるだろう。
確かに地政学的/文化的には興味深く、知識欲や知的好奇心を唆られる音楽ではあるが、好きかどうかは別の問題で感性の方がぴくりとも反応しない。

リズム要素だけに耳を傾ければそれなりに興味深くはあるのだが、驚異的なまでに退屈な上音が致命的。
Tinariwenなんかを連想させる哀愁を帯びたギターの音色が奏でるマイナー調のメロディは確かに西アフリカの都市の光景を連想させるものではあるが只管好みではない。
ヴァリエーションがあれば未だ良いのだが、リズム、音色、メロディ、フロウに至るまで、驚く程一本調子で無駄に曲数は多く、収録時間が長いのが逆効果としか思えない。
オリジネイターとしての自負は解るが、形式に依存し過ぎの感は否めない。