Christine And The Queens / Paranoïa, Angels, True Love

前作「Chris」にはもうちょっとアッパーな印象があったが、本作は一転して抑制されたムードで統一されている。
M2後半にはノイジーなブレイク・ビーツも登場するが、決してダンス・フロア向けではなく寧ろインダストリアル風で、A. G. Cookが手掛けたM8のチージーなシンセの主旋律とウォブル・ベースにシンバルが過剰なノイジーなビートの組み合わせが唯一ハイパー・ポップ的と言えそうではあるが、テンポはスロウでダンス・ポップと呼べるものではない。

強いて言うならドリーム・ポップとかトリップ・ホップとかが比較的しっくり来るが、かと言ってトリップ・ホップというタームに付き纏うメランコリーは希薄、メロディは寧ろ晴れやかと言っても良いくらいで、総じてFKA TwigsとLana Del Reyの中間辺りというのが収まりが良さそうな気がするが、と言っても種類は違えどその両者に共通するデカダンスがある訳でもなく、寧ろLordeくらいが丁度良いかも知れない。

個々の楽曲のソング・ライティングは決して悪くないが、何処か金太郎飴的で起伏に乏しく最初の3曲目以降はM8まで全く記憶に残らない。
それも本来は3枚組20曲100分近いボリュームの本作をそうとは知らず9曲40分程度に纏めたダイジェスト版で購入してしまったものだから、全体像を語れる筈もなく、出来不出来を云々言う資格は全く無い。
だからと言って正規版で聴き直そうとは全く思わないのだけれど。

そのボリュームの他にはMadonnaが担ぎ出されている(しかも2曲も )のがトピックとは言えるのだろうが、ちょっとした語り以外には何をしているのか良く判らず、クレジットに値するとは思えない。
とは言えHéloïse Adelaïde Letissier以外にも、Charli XCXやCaroline Polachekは勿論の事、ひょっとするとGrimesだって好き嫌いに関わらず皆Madonnaの子供には違いないのだから、シンボルとして担ぎ出すにはジャストなタイミングなのは間違いない。