Sleaford Mods / UK Grim

M1の寒々しいエレクトロ・パンク/インダストリアルからは、前作「Spare Ribs」が彼等にしては比較的ポップな作品であったというのが良く解る。
全編を通じてメロディ要素は皆無とまでは言わないものの極めて稀薄で、その冗長さは確かにCabaret VoltaireThrobbing Gristleに通じるし、M5の電子オルガン風の音色等は何処かSuicideっぽい。

一方でチープな電子オルガンと生ドラムの組み合わせがファニーなM5はBeastie BoysのAd RockとSuicidal TendenciesのメンバーがやっていたBS 2000を彷彿とさせ、その荒凉とし た中にも何処か愛嬌があると言うか、格好付けきれないところが彼等の魅力だと言えるだろう。
特に酔っ払いが管を巻いているようなヴォーカルの力は殊の外大きいように思える。

ベースとドラムの要素の他にはほぼ単音の上音しか登場しない徹底的に簡素な造りで音数は極端に少ないが、その分M14のカッティング・ギター等、ちょっとした意外な音色が効果的なアクセントになっている。
基盤を担うベースとドラムにしてもその音色には楽曲毎の個性があり、単調さを回避するのに一役を買っている。
ここまでミニマルだとごく微細な差異でもそれなりにフックになり得るものだと感心させられたりもする。

SuicideやThrobbing Gristleほどディストピックではないし、ファニーと言っても例えばSparksほど空虚ではない。
考えあぐねてこのチープネスやシンプリシティが齎す快楽の質に近いと思ったのはThe Streets「Original Pirate Material」やM.I.A.「Arular」で、その成分に含まれる怒りやシニシズムとユーモアの配合が良く似ているからなのだろう。