Dinner Party / Enigmatic Society

幽玄で抒情的なRobert Glasperのピアノに静かに熱を帯びたKamasi Washingtonのテナー・サックスが絡むM1が先ずは白眉。
ノンビートでTerrace Martinと9th Wonderは蚊帳の外なだけに、アルバムの中では少し特殊な立ち位置のイントロ的な楽曲だが、この1曲に留めておくのが勿体無く思える程で、このプロジェクトとは別にGlasper/Washingtonのジャズ・コンボ作を聴いてみたい。

M2以降はブーンバップ・ベースのR&B/ヒップホップ・ソウル風の楽曲がメインになり、特にM3はR. Kellyなんかを思い起こさせる。
これが少し前ならベテラン達が挙って内輪で随分と旧態依然とした音楽を演っているという印象を受けた事だろうが、オルタナR&Bの反動なのか、例えば直近ではMahaliaにも感じた90‘s回帰傾向が顕在化しているように思える昨今だけに、特段古臭くは感じない。

淡々と進むリズムの上をヒプノティックにサックスが漂うフュネラル・マーチのようなM4やアフロ・ビート調のM7は間違い無くKamasi Washington主導であろうが、ラストを飾るクラシック・ソウル風が唯一9th Wonderらしさを感じさせるのを除いてはサンプリングの存在感は希薄で、(実に贅沢な話ではあるが)ピアノもサックスも何処となくパーツ的である事からも、パワー・バランス的にはTerrace Martinの比重が高いプロジェクトなのかも知れない。
(まぁ言っちゃあ悪いが4人の中では一番暇そうなのも確かだし。)

参画者の異なるバック・グラウンドや趣味嗜好や素養が溶け合ったりシャッフルされる事無く、曲単位で誰か1人がメイン・ソングライターとプロデューサーの役割を担い、他のメンバーは単なるフィーチャリング・アーティストであるような在り方はコラボレーションの形としては詰まらない類のものと言わざるを得ず、この面子の割に扱いが小さいように感じるのもその辺りに原因があるのかも知れない。