Jamila Woods / Water Made Us

少し単純化し過ぎかも知れないが、恋愛の始まりから終わりまでの感情の移ろいがテーマとの事で、確かにM2やM3には出逢いの時期の浮き浮きとしたムードが巧く表現されている。
言葉にすると実に陳腐な感じがして恥ずかしい事この上無く、また別に良い歳をして共感も何も無いのだが、恋愛映画を観ているような映像喚起力は確かにある。

とは言えそれは後半に進み別れが近づくに連れ直線的に感傷的になっていくような単純なラヴ・ストーリーではないし、トラックの表情も豊かで、M7等のクラシック・ソウル風から仄かにアフロ・ビーツ的なM11、M13のシンセ・ポップまでとヴァリエーションに富んでいる。
決して著名なトラック・メイカー/プロデューサーが手掛けている訳ではないが、少しメランコリックでレイドバックした曲調にトラップとドラムンベースが合わさったようなビートがユニークなM5を始めとして聴きどころは充分。

サウンドの多様性に加えて、コーラスが効いたギターや柔らかなエレクトリック・ピアノの音色が醸出するドリーミーで浮遊感に溢れた音像等はKali Uchis「Isolation」に通じるものがある。
尤も官能的でバッド・ガールのイメージが漂うKali Uchisに対して、Jamila Woodsには清廉でコンシャスな雰囲気があり、正に陰と陽という感じの対称性があるが。

ところで本作のようなストーリー性のあるアルバムにボーナス・トラックを付ける事程無粋な事は無いと思っていたが、中々どうしてアウトテイクも出来が良い。
M19はギター・ポップ調のM14のアーリー・テイクだが、シンプルなR&B的アレンジが却って曲の良さを引き立てている感があるし、ラストを飾るM3のリミックスも本編には無いアグレッシヴなビートが格好良く、珍しく日本版を買って良かったと思わされた。