The Rolling Stones / Hackney Diamonds

Mick Jaggerのヴォーカルが位相の中心にどっしりと据えられており、その年齢を感じさせないパワフルで安定感のある歌唱が、このアルバムの比較的高い評価に繋がっているものと思われるが、不謹慎だと解っていながらどうしても老人のドーピングといったイメージを喚起させ、若干の居心地の悪さは否めない。

ソング・ライティングのクレジットには数曲でJagger–Richardsに加えてプロデューサーであるAndrew Wattの名前があり、その貢献がどの程度のものなのかは判らないが、思った以上にThe Rolling Stonesそのもの。
M3はお得意の「Salt Of The Earth」や「Waiting On A Friend」系統のロック・バラードで普通に良い曲だし、スライド・ギターが存在感を放つM6のブルーズは黄金期を彷彿とさせたりもする。

Paul McCartneyStevie WonderはともかくM11でLady Gagaをフィーチャーしているのはいただけないとも思ったが、Tina Turnerの代わりだと思えばそんなに悪くはない。
これが20〜30代の新人バンドの作品だったとしたら勿論受け入れ難いが、The Rolling Stonesのニュー・アルバムとしては及第点以上で、今の彼等に出せるベストの出来だろう。

それでもやはり違和感があるのはアルバムの大半を占めるアタックの強いビッグなドラム・サウンドで、否応無くCharlie Wattsの不在を猛烈に実感させる。
その結果はかなり普通のロック、と言うのはThe Rolling Stones以上にロックの「普通」を定義してきたバンドも無い訳だから可笑しなロジックではあるが、ジャズに出自を持つCharlie Wattsのドラムがそのサウンドを特別なものにしていたのは間違い無い。