Animal Collective / Isn't It Now?

D'Angelo「Voodoo」を手掛けたRussell Elevadoの手による完全アナログ・レコーディングの産物であるオーガニックな音像が、「Here Come The Indian」以来に思えるある意味ローファイと言える感覚を齎しているが、単純なアマチュアリズムやエクスペリメンタリズム回帰ではなく、依然としてポップ・ソングのストラクチャは保たれている。

同時に「Feels」〜「Merriweather Post Pavilion」期の圧倒的なユーフォリアな狂騒こそ無いものの、恐らく「Centipede Hz」以降で最もサイケデリックな作品でもあり、フォーキーな質感と言い、何処か牧歌的なメロディと言い、Panda Bear「Person Pitch」に近い感覚がある。
エッジが立ったスクエアな音像は雲散霧消し、ほぼ初めてオーセンティックなサイケデリック・ロックの末梢にAnimal Collectiveを見い出すような感がある。

ドラムにしろベースやギター、その他のキーボード類にしろ、器楽演奏の存在を驚く程明確に聴き取れるという意味で紛れもないバンド・サウンドだと言って良い。
M2後半のクラウト・ロック的展開はCanとBoredomsThe Beach Boysが合体したようだが、それは元来のAnimal Collectiveのイメージそのものであり、そういう意味ではある種の原点回帰だと言っても良いのかも知れない。

嘗て動物達を覆っていた神秘のベールは完全に剥がれ、現れたのは4人の中年がリラックスした雰囲気で輪になって演奏する姿。
と言うとまるで貶しているようだがそうでは無く、確かに自分が熱狂したAnimal Collectiveとは全く違うがネガティヴな印象はまるで無く、バンドとして実に良い歳の取り方をしたものだとさえ思う。